「地獄の黙示録」はだいぶ昔に見たことがあるのですが,時間も経っていますし完全版は見たことがなかったので見ました。
テーマは偽善と狂気?
昔見たときには,この映画のテーマは偽善と狂気だと思っていました。
アメリカ人による様々な狂気や偽善を並べて,最後にアメリカ人から見た野蛮な文化の狂気を出す,でもアメリカ人的な狂気と一見野蛮な狂気,一体どっちがマシなんですかね,っていうことがいいたいのかなと。
しかし今回別のことに気付かされました。
この映画で一番の見どころの一つは,ヘリ部隊がベトコン集落を襲撃するところでしょう。
何回見てもすごい。
目まぐるしくカメラを切り替えてヘリのスピード感がとてもよく出されていますし,「ワルキューレの騎行」も見事にシーンと合っています。
馬に乗った開拓者が悪いインディアンをやっつけるという西部劇の構図と一緒で,まさに「騎兵師団」,見てると単純に爽快で楽しくなってしまいます。
そればかりか,見ているとキルゴア大佐やヘリの中から機関銃を撃つ米兵に乗りうつってしまいそうになり,味方のヘリがやられると「クソッ」と,ヘリを爆破したベトコンがやっつけられると「よっしゃ!」と思わず声が出そうになってしまうほどです。
それくらいよく作られたシーンだと思います。
映画を見てるあなたも偽善者
しかし見ていてふと感じました。
そういう風に見ているお前も偽善者だし狂ってるよって。
確かにそのとおりだなあと思いました。
戦争はいけないよねって表面では思っていても,音楽と映像効果の力だけでケロッと参ってしまう。
なんと浅はかなことでしょう。
つまりこの映画は,普段の生活じゃ隠されてはいるけど,こういうちょっとした心躍らされるような仕掛けや集団的な熱狂とかがあれば,すぐにでもそういう偽善や狂気は出てくるんだっていうことが言いたいのではないかと感じました。
だからこそあのシーンは,金や時間や手間をたくさん使って入念に仕上げられたのではないでしょうか。
私は狂ってないし偽善者でもありませんよってうそぶく人も,ホントはみんなそういったものを持ってるし,ちょっとした仕掛けがあればそれらはすぐにむき出しになるんだよ,ということをあぶり出してくれる映画,というのがこの映画の真価なのではないかというのが,改めてこの映画を見て感じたところです。
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