「華氏119」という映画を見ました。
マイケル・ムーア監督の作品は初めてです。
渦巻く怒りが映画の中から湧き出してくるようで圧倒されました。
こういうエネルギー渦巻く映画をどこかで見たことがあると思って考えてみたら,「ゆきゆきて,神軍」でした。
↑の記事によるとマイケル・ムーア監督もこの映画を 「生涯観た映画の中でも最高のドキュメンタリーだ」と評価しているそうです。
さもありなん。
この映画もかなりの衝撃があるので,見たことがない人は見た方がいいですよ。
コスト削減による上水道の汚染
私はこの映画を見て,一つの事例として取り上げられていたミシガン州フリントの水道汚染の話が大変印象に残りました。
映画では知事が金儲けのために水道民営化に走ったことが汚染の原因・・・と描かれていますが,少し調べてみたところちょっと違うようです。
どちらかというと水源を始めとした周りの自治体が民営化する中,財政破綻したフリントと金額の折り合いがつかなくなり,水源を変えたことが原因みたいです。
そうはいっても財政破綻したフリントの破産管財人が,水質の安全よりもコスト優先したことは事実です。
重要インフラでコスト削減を進めすぎるととんでもないことがよく分かりました。
この問題は未だに解決してないらしく,アメリカのくせに汚染水を供給し続けて改善すらできない町があるということにも大変驚きました。
医療の自由化を進めすぎたら・・・
話は少し変わるのですが,映画を見たあとで「ルポ 貧困大国アメリカ」という本を読みました。
後半は憲法9条とかが出てきて辟易するような内容なのですが,前半は面白かったです。
ライフラインや医療の市場原理を先鋭化させすぎるとどのようなことになるか,実例がたくさん挙げられています。
医療保険に入らないと高額すぎてまともな医療が受けられないこと,しかし医療保険自体が高く医療保険に入れずまともな医療を受けられない人が多くいること,中間層もいったん病気にかかると医療保険が一気に高額になり貧困まっしぐらという綱渡り状態であること,など読んでいてクラクラするような内容です。
自由の国とか先進国などと自称しつつ,まともな医療すら受けられない人が多くいるのはなんなのだろうと思います。
日本も人ごとではないのでなかなかゾッとします。
まとめ
華氏119での水質汚染にしてもそうですし,医療とか水とか生命に関わるインフラの自由化を進めすぎるとまずいです。
日本でもそういう動きが出つつありますが,本当に慎重に議論すべきことで,これこそ堅持しないといけないことだと思います。
自民党一強だとそういう議論を深めることもできないでしょうから,そういう面でも野党に頑張って欲しいのですが,なんでも感情的に反対するだけなので頼りにならないのが悲しいです。
建設的な議論をしてくれるだけで野党を支持するのになあ。
話を戻します。
私はこの映画を見て重要インフラの民営化ということが印象に残りましたが,この映画で一番重要なことはリベラルの崩壊ということでしょう。
リベラルへの失望が政治への無関心へとつながり,それがトランプ大統領というキワモノを生み出してしまった土壌になってしまっていると映画では語られています。
これはアメリカだけではなく世界的な流れで,右傾化が進んでいるというよりもむしろ左派が自壊しているだけと。
なるほどなあと納得できました。
そういう世界的な流れを見ることができるという意味でも,見るべき映画だと感じました。
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