「ぼけますから、よろしくお願いします。」という映画を見ました。
新年早々,今年一番の傑作かもと思うほど良かったです。
この作品は,信友直子さんというテレビディレクターが自分の両親が老いていく様子を映画にしたものです。
特に母親が認知症を患ってからの変化に焦点が当てられています。
老いとか認知症とか介護とか,生々しい,みんなできれば避けて通れるに越したことはないと思っているような話題なので,見る人によっていろいろと思うところがある作品かもしれません。
かっこいい
私がこの作品を見て一番思ったことは,二人ともすごい,かっこいいということです。
母親は元々は社交的で子育て後は書道にのめり込むなど活動的,父親は定年まで会社勤めをした後は活字中毒状態で95歳にして英語学習をしているという知的好奇心の塊のような人です。
そんな中,母親が認知症を患ったため,生活が変化が生じます。
なんと95歳の父親が家事を始めます。
「わしがやるしかないじゃろう。」と割とひょうひょうと受け入れ,なんとかこなしています。
95歳にしてこんな大変化に対応できるってすごいです。
認知症の影響で子供のような言動が増えていく妻に対しても,淡々と接しています。
表立った表現はあるわけではありませんが,愛情を持って接しているのが映像を見ているとよくわかります。
加えて二人の間にはほのかなユーモアが常に漂っているように感じます。
家族が認知症になって,これまでどおりに接することが出来なくなった場合,家人の変化に耐えきれず家庭内の空気が冷たいものになってしまうこともあるでしょうが,この二人にはそういったものをあまり感じさせません。
ユーモアというより温かい空気というべきかもしれません。
60年近く連れ添った,夫婦の究極形なのかも。
老年にふさわしい生き方
作中では,二人がまだかくしゃくとしていたころの映像が頻繁に挟まれており,それらとの比較により二人の老いというものを強く感じさせられます。
かつては元気に歩いていた二人が,今ではやっとの思いで歩く様子を見ていると寂しい気持ちもしますが,同時に老人らしくかっこよく生きているなあと思えるのです。
だって老いは誰にでもやってきます。
そして認知症などの病気で体も心もだんだんと不自由になっていきます。
でも人間である以上そうなることは仕方ありません。
多くの人はいつまでも若くありたいとか老いを否定しがちですが,それは間違っているのではないでしょうか。
どうやっても逃げられないものなのですから,それらを淡々と受け入れて,一日一日を丁寧に生きていくことが本当に素敵なことなのではないですかね。
この映画を見て強くそのように思いました。
みんな等しくやってくる未来の自分や家族のために,この映画は見ておいた方がいいと思います。
コメント