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「漫画ルポ 中年童貞」~救いようがないとはまさにこのことだが人ごととも思えない,なんだこれは

本当に絶望的な気分になる作品です。
いや,いくつか救いになるケースはあるんですけどね,でも読んでいると痛々しくてたまらない。

なぜそのような気持ちになるかというと,自分も彼ら中年童貞とたいして変わらないからだと思います。
読んでいて重なるというか,わかりたくないけど彼らの気持ちがわかってしまい,それがたまらなく嫌,そんな感じです。
自分も過去に選択肢を誤っていればこうなっていたかもと思われるような事例ばっかり。
さらに桜壱バーゲンさんの人間のアクを煮詰めたような絵柄がますます絶望感を高めてくれます。

このようなことにならない,またはそこから抜け出すために最も必要なことは何なのでしょう。
この本でも書かれているのですが,自分を客観視することがまずは最も重要なのではないでしょうか。
中年童貞とはいってもそこに到った経緯はケースバイケースです。

しかし彼らの共通点として,みな強力なバリアの中に閉じこもっているということが挙げられます。
自分だけのお花畑にどっぷりつかっていて自分を客観視することができません。
でも自分を客観視しようとすれば,自らバリアの外に出なければなりません。
自分が作ったバリアを壊して,外から自分を分析していけば,自分がやらなければいけないことがそれぞれ見えてくるのではないでしょうか。

このような人間が実際に市井へたくさん潜んでいることは間違いありません。
私が警察官やっていたときも,若くして悩んで自死する人,寄生していた親が死んで自分も死んでしまった人,不摂生がたたり若くして一人部屋の中で病死する人たちを少なからず見てきました。
今後は高齢化も進み,ますますこのような人々が増えてくるのでしょう。恐ろしいことです。
本当に人ごとじゃねえですよ。
童貞じゃなくても,高齢化などで自分を客観視できなくなってこの本に出てくるようなイタい人物になる人はいますからね。だからある意味誰でもなりうる存在といえるかもしれません。

ブラック企業とか昨今いろいろ大変な問題はありますが,こういう本来ならば労働人口としてカウントされる人々を掘り出す作業も大切なのではないかと考えさせられたりもする奇書です。
読んでいるとつらいですが。

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