山は怖いということを改めて教えてくれる
山が好きです。
とはいっても本格的な登山をしたことはありません。
すぐに行けるような里山を楽しむばっかりで。
その一方で山は怖いです。
すぐに表情が変わるのが怖い。
夜の山登りはしたことはありませんが,夕方近くになったことはあります。
その時のつるべ落としのようにあっという間に周りが暗くなっていく時の不安感といったら今でも良く覚えています。
あと,そこそこ高い山に登った際に急に天気が変わった時も怖かったなあ。
さっきまで晴れてたのにあっという間に一面の霧。
山怪を読むとその時の恐怖感を思い出しました。
この本は著者の田中氏が日本全国を渡り歩き,山で暮らす人々から彼らが体験した不思議な話を聞き取っていくという形をとっています。
そりゃ気のせいだろうというものから,そういうのなら自分もあったなあというもの,読んでてブルブルっとくるものまで。
クスッとする場面も
中には変なものも。
「真冬に捕ったウサギをうちに持ってきて、宴会になったことがあってね」
寒い季節に皆で捕ったウサギを鍋にして酒を飲む。山里の大切な楽しみである。しかし、時としてとんでもない事態も起こる。
「そのうち酔っぱらってきたら喧嘩が始まって、〝表へ出ろ!〟って騒ぎになって……」
まあ、ここまでならどこにでもある話だが、ここからが猟師の集落らしい。
「鉄砲持ち出して撃ち合いになって、怪我人が出て凄く怖かったよ、あん時は」
日活のアクション映画ばりの雪原の銃撃戦である。これは山のものの怪よりよほど恐ろしい
いや,それ怪談ちがう,単なるケンカ。
今の引用でもそうなんですが,話の終わりに氏のコメントが入るんですけど,それが面白い。
どうしても仕留められない熊がいて,そういう熊のことを狐憑きの熊と呼ぶという話の最後に
この場合,狐は熊に憑いているのか,それともマタギに憑いているのか?
とか,昔は火の玉が出ていた場所だったけど,今は出なくなったという話の最後に
火の玉にも寿命があるようだ
とか。
そこ突っ込むところが違くないですかって感じで。
ゾッとした後の爽やかな清涼剤になっています。
山とか自然に対しては敬虔であるべき
でもやっぱりね,今の人間に分からないことなんていくらでもありますよ。
非科学的だと断言したらそれまでで,そこから議論が進まなくなる。
すべての事象が今の我々に理解できるわけがないじゃないですか。
別に霊を信じているというわけじゃないんですが,でもなにかしら今の科学では説明のできないエネルギーというかわけのわからないものはあると思うんですよね。
自然の中に入りこむと,そういったものに触れやすくなるのも事実だと思うし。
人間はもっと自然に対しておごることなく謙虚にあるべきです。
いずれにしても,自然に対する畏れを持たないといけませんよってことを教えてくれる良書です。
続編も出ているのでぜひ。
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