元官僚が交通死亡事故を起こして逮捕されないのは忖度なのか

捜査系の話

Twitterとかを眺めていると,任意(在宅)で処理されている事件について

「なぜ逮捕されないのか」
「これは国家権力の横暴,特権階級への忖度だ」

などといった発言を見かけることがあります。

例↓

これも一種の「忖度」?『池袋の交通事故をおこした運転手、記事みると名前にさん付けされてる。「容疑者」じゃないんだね』朝日新聞などの報道で
まとめました。 更新日:5月20日08時24分

それはちょっと違うのではないかと思うので,なぜそう思うのかを書きます。

逮捕するしないの基準は?

逮捕して取り調べるのは被疑者の逃走,証拠隠滅を防ぐためです。
逆にいえばそういう可能性が高くない場合,逮捕せずに任意で取り調べることになります。

逃走・証拠隠滅のおそれっていうのはいろんな要素を総合的に考えます。

罪種

例えば罪種。
殺人など刑罰が重い罪の場合,軽い罪と比べて刑罰を恐れて逃走する可能性が高くなりますよね。
ですから自転車泥棒で逮捕されることはあんまりありません。

故意犯と過失犯で比べると,やはり過失犯は故意犯よりトーンが下がります。
自分の意思でやったのではないですからね。

前歴

前歴があれば今までの経験を活かして逃走・証拠隠滅するんじゃないかと考えます。
なので前歴がいっぱいある人は逮捕されやすいです。

住居・定職・家族の有無

住居や家族や定職がない人は何も失うものがないので高飛びする可能性が高いと思われます。
逆にいえば軽犯罪や自転車泥棒でもこれらの状況が悪ければ逮捕されることがあります。
住居不定とか呼出しに応じないとか。

私が見聞きした例でも,頭のアレな人が出頭すればすぐ終わる軽犯罪の取調べに頑として応じず,仕方なしに逮捕されたことがあります。
こんなくだらないことで逮捕状を請求しなければならない担当係が気の毒でした。

年齢,持病

少年はその後の影響を考えて大人と比べると逮捕しないことが多いですし,高齢者も肉体的に逃走しにくいですし留置に耐えられないなどといった理由で逮捕されにくいです。

病気も高齢と同様に留置に耐えられないからという理由で逮捕しないことがあります。
私も経験でも,ある常習万引き犯が留置できないような持病を持っているばかりに逮捕できず毎回任意というケースがありました。
その人はそれをいいことにさらに万引きを続けてたんですけどね・・・その後やつはどうなったのだろう。

そういう諸々の事情を考える

こういったことを総合的に考えて逮捕するかどうかを決めます。
新聞に載るような事件は重たい罪のものが多いですから,自然と逮捕が多いと思われるかもしれませんが,実際は逮捕せずに任意でやるものはたくさんあります。

そう考えると今回の例は,報道の情報だけでも

  • 高齢であること
  • 被疑者自身も負傷していること
  • 過失犯であること

などが分かるので他の要素を絡めれば逮捕しないという選択肢も十分ありえるのかなと感じました。

逮捕されるのはあくまで捜査の手段で刑罰ではない

「逮捕されないのがおかしい」っていう人のツイートを見ていると,逮捕が刑罰だと思っている節があるように思います。
逮捕は単なる警察や検察が捜査するための手法の一つなだけです。
「そんなのお前に言われなくても分かってる」って言われそうですが,普段の事件報道とか見てても逮捕=犯罪者っていうニュアンスは強いですよね。
でも逮捕されることと有罪であることはまったく別の話なので,冷静に考えた方がいいかと思います。

少し話がズレますが,同様の考えで逮捕段階で実名等をさらされることの方が問題なのではないかと思います。
逮捕された時点ではあくまで被疑者でしかなく,無罪の可能性だってあるわけですから。
さらし者にするのなら有罪が確定してからが筋ではないでしょうか。

参考記事↓

まとめ

ただ当然ですが実際の判断材料が何なのかは分かりません。
報道のほんのわずかな情報だけでは個々の具体的事情なんて知り得ませんから。

逆にいえばそのようなわずかな情報だけで感情的な反応をするのはどうかと思います。
国家権力がとか忖度がとか言い出すのはどう考えても論理の飛躍ではないでしょうか。

似たような例で示談もありますので,それについては下記記事参照。

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