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暴行犯人を現行犯逮捕した時の流れ(強制事件の処理例)

警察の具体的な仕事

暴行犯人を現行犯逮捕した時の流れについて,例を挙げて説明してみます。

友人と繁華街を歩いていたところ,見知らぬ人にいきなりからまれて殴られたので,その場で友人と共に捕まえたという単純な事例にします。ケガなし,友人は目撃者です。
これくらいだったら本当は簡易書式という少し簡単な書類になることが多いのですが,説明の都合上基本的な書類で作ることとして説明します。

現場

被害者自らが捕まえているので私人による現行犯逮捕ということになります。
警察が来たら被疑者を引き渡して,状況を説明します。

逮捕に問題がなければ事件処理を進めていきます。
逮捕されている被疑者は引致といってすぐに署へ連行しないといけないのですが,被害者は現場で見分などの立会人になってもらうことが多いです。

実況見分

どこで殴られたのかを説明しないといけません。
さらにどのような感じで(右手で左頬など)殴られたのか,それは目撃者(友人)から見えるのかなどを再現したりしながら位置関係を計測したり写真を撮ったりします。

参考記事

現場での所要時間

警察官が現場に到着してから短くても1時間弱は必要です。
現場に証拠品や資料があったり,防犯カメラがあったりするとそれらの確認や保全などでさらに時間が長くなります。

警察署

現場での作業が終わったら警察署などへ行って書類を作ります。
この場合だと現行犯人逮捕手続書,被害届,供述調書(被害者と目撃者)です。
もちろん書類自体を作るのは警察官ですが,警察官が書類を作れるように状況を説明しないといけませんし,作り終わった書類を確認して署名しなければいけません。

被害者が付き合うこと

取調べ

被害者,目撃者は分かれて別の取調官にそれぞれ状況を説明します。
特に被害前後についてはかなり詳細な説明が必要です。
それぞれの取調官は供述者から聞いた内容に矛盾がないかをすりあわせます。
事例のような単純な例で供述が狂うことはほとんどありませんが,勘違いをすることなどはちょくちょくあるので油断できません。

すりあわせた結果や現場の見分結果などから被害の詳細な事実が見えてくるのでそれに従って書類を作ります。

要点を絞って書類を作りますが,それでも供述調書は5,6枚くらいにはなると思います。
状況が複雑だったりすると数十枚になることもしばしばありますし,場合によっては当日は簡単な流れだけ取って,後日詳細にまた話を聞くということもあります。

写真

署でも写真を撮ります。
被害者がどんな人か,被害時にどんな服装だったのか,殴られた箇所はどうなっているかなどを証拠にしないといけないからです。

署での所要時間

書類は可能な限り並行して同時進行で作成しますが,所要時間は短くて2時間くらいはかかると思います。
複雑になればなるほど時間はどんどん増えます。

ケガをしている場合は,後日診断書を警察へ提出したり追加で簡単な供述調書を作らなくてはいけませんが,ケガなしで訂正などもなければ被害者についてはこれでとりあえず終わりです。

犯人は?

弁解録取

署に連行されるとまず弁解録取という機会が与えられます。
弁解録取書という書類を作ります。

人定の特定

犯人がどこの誰であるかを特定します。
免許証などの身分証を持っていれば比較的簡単ですが,そうじゃない場合などは苦労することもあります。

写真

被害者と同様に,犯人がどんな体格や外見の人間か,どんな服装だったかなどを明らかにするのに写真を撮ります。

被疑者指紋,写真

証拠として使う写真とは別に犯歴データベース用の指紋と写真も撮ります。

留置場へ

昼間だとそのまま担当係(この場合強行犯係)が取調べに入ることもありますが,夜の場合は留置場へ入れて翌日が取調べです。

担当係の取調べではだいたい供述調書を2通取られます。

送致

これらの書類はまとめて逮捕から48時間以内に検察庁に送らないといけません。
報道で「送検」と言われているやつです。

被疑者が犯行を素直に認めていて身柄拘束を続ける必要が無い場合などは,警察判断で48時間以内に釈放することもあります。
そうじゃない場合は,身柄と書類が一緒に送致されます。
この身柄付送致がニュースでよく流れるやつです。

ここまででできた書類

  • 送致書(頭書きみたいなものです,あと目次)
  • 現行犯人逮捕手続書
  • 弁解録取書
  • 捜査状況報告書(最低でも被疑者がどこの誰かを特定した捜報が1通)
  • 被害届
  • 実況見分調書
  • 写真撮影報告書(事例の場合,現場,被害者,被疑者の写真で少なくとも3通)
  • 供述調書(被害者,目撃者が1通ずつ,被疑者が通常2通の計4通)
  • 照会関係(身元や前科,犯歴などを照会したもの)

細かい点ははしょっていますが,簡単な事件でも最低これだけは必要です。

まとめ

単純でショボい暴行でも人を逮捕するとなるとこれだけ手間が必要です。

被害者の所要時間は短くて3時間くらいです。
もちろん事件の複雑度や捜査員の実務能力などによって時間は変化します。

人を逮捕したり罰するための手続きにのせるのはやっぱり大変なことなので,時間がかかってしまうことが少しでも分かってもらえればと思います。

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