佐々木俊尚氏の「広く弱くつながって生きる」を読みました。
崩れつつある今のシステム
今,従来の日本的な雇用体系は崩れつつあります。
なぜなら日本的終身雇用を維持するためには,日本が成長し続けること,給料もそれに従って右肩上がりに上がることが求められているのですが,それを続けることが難しいからです。
世界的にはグローバル化,同一労働同一賃金に向かって大きな流れができつつあります。
これまでの先進国の豊かさは,発展途上国の低コストな労働などによって支えられてきた面があります。
それらが改善され均一になりつつあるということは,発展途上国は豊かになり先進国は貧しくなるということです。
それは世界的な格差の是正でありまた大きな流れなので,逆らっても仕方がないと言えます。
となると今後右肩上がりというのは難しく,いよいよ日本的な終身雇用を維持するのは難しいということになります。
つまり今私たちは生き方を考え直さなければならない時期にいるということです。
しかし私たちは何をすればいいのでしょうか。
この本にはそれに対するヒントが書かれています。
新たな武器→広く弱いつながり
先進国にとってグローバル化は先行きの暗いもののように思えます。
しかし一方で私たちは新たな武器を手にしています。
それはインターネットであり,特にその中でもSNSによる新たなつながりの誕生です。
筆者はこれらを利用した「広く弱いつながり」をたくさん作っていくべきだと言っています。
今まで私たちが属していた多くのつながりは,会社組織や血縁地縁などといった狭くて強いつながりでした。
それらはハイコンテキストなルール,強烈な同調圧力や排他性などかなり面倒なものではありますが,その組織に属していれば,仕事が回ってくる,待遇が上がるなどそれなりのメリットもありました。
逆に言えばそういうつながりがなければ,今までは生きていくのが難しかったともいえます。
しかし現在は前述のようにそういうつながりの中にいてもメリットがなくなってきている上に,それらに頼らなくても仕事をすることができるようになってきました。
また,そもそもこういった同調圧力の強いつながりは,江戸時代の武士階級や農村階級あたりで導入が試みられて,明治時代の富国強兵策とともにうまくハマっただけのもので,日本人に本来根ざしているものとはいえません。
そういったことを考えると,従来のつながりから「広く弱いつながり」へシフトした方がいいのではというのが筆者の主張です。
「広く弱いつながり」は,たまに会う友人のように一つ一つのつながりはそれほど強くなくても,たくさんあればそれらが網の目のようにつながりあって,一つの大きな,強いセーフティネットになるという考えです。
ただそのためには広くつながっていかなくてはならず,相手をうまく選別しないといけません。
その可視化ツールとしてもフェイスブックやツイッターは有効です。
また本書で紹介されている新しいつながりの作り方の一つに多拠点生活というものがあります。
佐々木氏も実践しており東京,軽井沢,福井の3拠点で生活しているそうです。
私は佐々木氏のツイッターもフォローしているのですが,タイムラインにも時折多拠点生活のメリットデメリットが流れてきます。
それらを見ていると面白そうなので,私もやってみようと思っています。
このように現在は,時代と時代の節目にあるといえます。
先行きが見えず不安といえばそうかもしれませんが,一方でいろいろなことが起こりそうで面白そうな時代です。
どうせ人間なんて長生きしても100年ちょっとしかないのですから,どうせなら将来におびえながら生きるよりは楽しく生きた方がいいのではないでしょうか。
あと,以前紹介した
も将来の生き方を考えるという面では,合わせて読むとよいと思います。
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