最近有名になりつつある磯田道史氏を知っていますか?
NHKのBSで「英雄たちの選択」の司会なんかをやってる方で非常に博学な歴史家です。
その人が書いた「天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災」という本があります。
私は警察に勤めていたこともあって防災については以前から関心があります。
日本史も好きなので,こりゃ読むしかないと思って読みました。
読んだらやっぱり最高に面白いですよね。というわけでオススメです。
歴史は繰り返すといいますが本当にそのとおりだと思います。
だとすれば,私たちがこれから生きていく上で,歴史に学んでその羅針盤とすれば,過ちも減るのではないでしょうか。
どんな本?
古文書などを読み解いて,過去の災害を明らかにし,今後の防災につなげようという本です。
歴史を学問的な研究対象とするだけではなく,今生きている私たちの糧にしようという磯田氏の熱意が本書の端々から強く感じられます。
本書を読むと,歴史は繰り返すとという事実が改めて分かります。
なおかつ南海トラフ地震などの次の災害がいつごろ発生するのだろうかという予想もある程度つきます。
過去の資料から,さまざまな災害に対する被害規模もある程度は判明しています。
それらを分析すると住んではいけないところというのは,昔からある程度決まっていることが分かります。
でも数十年,数百年と過ぎるうちに,喉元を過ぎれば何とやらで,便利だとか安いとかそういう理由でいつのまにかまた住んでしまうのが人間の悲しいところです。
リスクを許容した上で住むのならもう何も言うことはありませんが,何も知らずに住むのはバカとしかいいようがないです。
そんなもん自分で調べましょうよ。自分と家族の命がかかってるのに人任せ?
朝日新聞: 2年前に買った家が浸水 河川氾濫リスクは説明義務なし.https://t.co/TOnKJs514M@GoogleNewsから
— 山根厚介 (@yamanekosuke00) July 30, 2018
今回の水害でも,このようなことを他人のせいにしようとしている人がいるという時点でゲンナリ・・・自分と家族の命+自分の財産を委ねる場所なのに,どういう場所なのか調べずに買って,実際に被害に遭ったら説明がなかったと言って文句を言う時点で,人類の将来的には死んだ方が良かったんじゃないかと思います。
現代の我々は,歴史に学ぶという姿勢が少ない,もしくは忘れており,さらに自然そのものに対する敬意も失っているのではないでしょうか。
人間が自然をコントロールなんかできるわけがなくて,私たちは自然災害に対して今でも無力です。
今でもたくさんの人が亡くなっています。
先日発生した西日本豪雨を見ても,人間の科学や技術がいかに発展しようとも,自然がちょっと力を出しただけでもうコテンパンです。
とても真正面から立ち向かって勝負できるような相手ではありません。
だとすれば災害を防ぐ防災という観点で取り組むよりも,被害が少なくなるような対策,つまり減災を重視した方がいいのではないでしょうか。
減災という観点では,私たちよりも過去の人々の方が上手く立ち回っているように感じます。
そういうものの見方を学ぶのに本書は最適です。
すぐにでも使えそうなメモ
以下,本書から抜き出した今すぐにでも使えそうなくだりです。
メモ代わりに。
- 東海地震や関東地震が起きる際は4割程度で富士山が噴火する
- 富士山が噴火する前は5年くらい前から軽微な地震が増える,さらに2か月くらい前から火山性地震が続く
- 南海トラフ地震は約100年周期で発生,同時若しくは数年内に遠州灘から四国沖までが連動する
- 南海トラフ地震は90年より短い間隔で発生したことはない
- 南海トラフ地震は150年の間に発生しなかったことはない
- 津波は500年か1000年に一度,異例な巨大津波がくる
- 土砂崩れが起きそうな場所は歴史が教えてくれる
- ため池についても耐震診断をすべき
- 普段からの想定(どのように行動するか)が重要
- 津波から逃げる際は率先避難者が大声で「津波がくるぞ。××へ避難」と叫び回るとその声で周りも我に返って避難を始める
- 忘れ物を取りに帰ってはいけない
- 災害時には平時の慣習や規則が人命を損ないかねない(特に公務員的思考が危険)
- 危険に直面したときは,人間の直感は案外正しい
これを見るだけで,南海トラフ地震はかなり身に迫った危険であることが分かります。
あとは自分たちがどのように行動するかを日ごろから考えるのが,今の私たちがしなければならない課題ではないでしょうか。
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