ラジオライフの2018年3月号に,アナログの地域振興用無線はBCD436HPなどのLTRモードで受信できると書かれていたので挑戦しました。
しかし初めはうまくいきませんでした。なにがいけないのだろうと思い,LTRの仕組みから勉強して再挑戦したところ,今度はうまくいきました。単純なミスなのですが、ハマりやすい点でもありますので、紆余曲折の経過を書きます。
なお,全国的に概ねこの方法で受信できるようです。一部の地域(今治地域産業振興協会など)のようにLTRを使ってないところでは、この方法は使えません。
LTRとは
LTRは制御チャンネルがないMCA無線
まず,日本ではなじみのないLTRってなんぞや?って話になると思うのですが,LTRとは「Logic Trunked Radio」のことで簡単にいうと
制御チャンネルを持たない簡易的なMCA無線(トランキング無線)
です。
アナログMCA無線や米軍のP25トランキング無線など,一般的なMCA無線は特定のチャンネルが制御チャンネルとして使われていて,制御チャンネルではアナログだと「ギョロギョロギョロー」,デジタルだと「ビロビロビロ」などと聞こえる制御音が流れっぱなしになっています。各使用者は受信時は制御チャンネルを受信し,通話時には制御チャンネルの指示で,空いている通話チャンネルに移動して通話し、終わったらまた制御チャンネルに戻るというサイクルで使用しています。
しかし,LTRは制御チャンネルがありません。その代わり,チャンネルが空いているときには,他のチャンネルに対して「空いてますよー」というバースト信号を流しています。地域振興用無線を聞いていると分かるのですが,10秒おきくらいにごくごく短い信号が受信できます。これがバースト信号です。
LTRは使用者ごとにメインチャンネルが決まっている
それからもう一つの大きな特徴として,LTRは使用者ごとに主に使うチャンネルがあらかじめ決まっています。基本的にはそのメインチャンネル(ホームレピーター)を使い,メインチャンネルが埋まっているときだけ,他のチャンネルへ移動します。このチャンネルの制御にLCN(Logic Channel Number)が使われています。(後述)
TGID
各使用者にはTGIDというIDが割り当てられています。形式は数字6ケタで
A-HH-GGG
というもの。
Aがエリアコード,HHがホームレピーター番号(=LCN,これがかなり重要),GGGが各使用者ごとのグループ番号です。
詳しく知りたい人のために
LTRについて書かれた日本語サイトはほぼ皆無なので,英語サイトを読むしかないです。LTR全体については
Logic Trunked Radio – The RadioReference Wiki
LCNの挙動などについてはこの2サイト
Mapping an LTR System – The RadioReference Wiki
LTR Mapping with Uniden Bank Scanners – The RadioReference Wiki
が参考になりました。
また、LCNの探し方についてはよしおさんのサイトに詳しく書かれています。(後述)
BCD436HPでの実際の受信方法
メモリー編集ソフトであるセンチネルソフトでの構築方法を説明します。
Favorite List内にシステムを作る
まず,Favorite Listを開きます。新規でも,既存のものでもどちらでもよいです。
開いたら,Systemsタブの「+」を押して新しいシステムを作ります。System Nameは適当でよいですが,System Typeは必ず「LTR」にしてください。

今回の例では「LocalBusiness」という名前にしています。

初期状態では「ID Search」がオフになっていますので,必ずオンにしてください。
Department
前項で作った「LocalBusiness」を開くとDepartmentというタブが最初にあります。DepartmentとはLTR使用者のTGIDをメモリーしたものです。
ただし,最初からTGIDがわかるはずありませんから,作らなくてもいいです。今回の例では、とりあえずタイトルだけの空っぽDepartmentを一応作っています。

画像のようにDepartmentタブの「+」を押して作ります。名前はテキトーでよいです。
Sitesを作る
こっちが重要です。Sitesタブから「+」でSitesを新規作成します。
Sitesに周波数を割り当てる
地域振興無線はダウンリンクが
367.4500から367.7375まで12.5Khzステップの24波
割当てがあり,免許を見ると
一つの中継所(ブロック)には4波
割り当てられていることが多いので,下記画像のように4波ずつ割り当てたサイトを作成します。
地元でしか受信しないというのなら,地元の免許情報に従ってサイトを構成しましょう。

私の例でいうと,それぞれのSitesは
「Site1_4500-4875」であれば,367.4500-367.4875までの4波
という風にしています。
SitesにLCNを割り当てる
Sitesには周波数のほかに,LCN(Logical Channel Number)というのも割り当てなければなりません。このLCNが重要で,RL誌では重複しなければOKと書かれていましたが,実は正しい番号じゃないと周波数が合っていても全く受信できません。私が最初受信できなかった理由がこれで,テキトーな番号にしていたため全く受信できませんでした。
しかし基本的には
周波数順に1/2/3/4
と割り当てればだいたいいけます。これを0/1/2/3とか2/3/4/5とかにするとダメです。
LCNは周波数を入れる際

周波数の隣に入力してやります。
周波数順1/2/3/4で受信できない時は、よしおさんが書かれた
にLCNの特定方法が書かれていますので、これに従って調べてみましょう。記事ではDMRが取り上げられていますが、LTRの場合も同じようにLCNを探すことができます。
参考:私がLCNを調べた方法
LCNの調べ方は前記のよしおさんの記事がスマートなのですが、それを知らなかった私の調べ方についても一応残しておきます。
LCNはTGIDに表示されるホームレピーター番号と同一です。ですから,なんとかしてTGIDを表示させればいいのですが,最初はTGIDを表示させようがないので力業で判明させます。
私は,サイトの周波数すべてに1から順番に番号を割り当て,別の受信機で同時受信する方法で判明させました。例えば
367.5000,367.5125,367.5250,367.5375
のブロックでLCNを調べようとすると,まずすべての周波数にLCN番号1を割り当てます。
で,とりあえずスキャンを走らせます。同時に別の受信機でも367.5000から367.5375までスキャンをかけます。
BCD436HPのスキャンが止まってTGIDが「*-01-***」となっており,かつ,別の受信機の周波数が367.5000であるならば,367.5000のLCNは1とわかります。逆に別の受信機のスキャンは止まって通話があるのに,BCD436HPのスキャンが止まらないときはLCN番号が間違っています。なので,別の番号に変えます。LCN番号は1から20までなので,同じことを繰り返して,各周波数のLCNを判明させます。
とはいっても地域振興用無線は4つしか周波数がありませんし,さきほど書いたようにどうもどのブロックも周波数順に1,2,3,4と思われるので,割り出しにはそれほどかかりません。
まとめ
以上で地域振興用無線が受信できるはずです。元々各ブロックは4波しかありませんし,普通にスキャンさせてもいいのでしょうが,LTRで受信すれば特定局の追っかけ受信ができたり,特定局のみパスすることができます。マイナーな使い方ではありますが自分としてはけっこう苦労したので,他の人の参考になればと思います。
MCA無線(トランキング無線)もなかなか奥が深くて面白いです。トランキングってアメリカ受信機の独壇場で,日本の受信機は全く無関心なのがちょっと悲しいです。
コメント
検索から見つけて楽しませて頂きました。
ユニデンのBR330Tを使い貴殿の記事の通りに設定しLTRのトランキングに成功しました。(たぶん)
かつてJSMRが運用されていた時にBR-330Tでトランキングにチャレンジし苦労したことがありました。
最近はユニデンスキャナーを持つ人が増えたのでネット上に転がる情報で楽しんでいます。
今後とも楽しませて頂きます。
ありがとうございます。役に立って幸いです。
JSMRは,コンベンショナルなやり方でしか聞いたことがなく,トランキングで受信してみたかったです。